
アスベストは、その耐火性や気密性、吸音性からかつては人気の高い建材の1つでした。しかし、アスベストの危険性が認知されて以降は、建物への使用は禁止されています。しかし、古い建物にはアスベストが使用されている部位が残っている可能性が高いです。本記事では、アスベストが使用されている可能性が高い部位に焦点を当てて解説します。
アスベストはかつて「夢の材料」と呼ばれていた
アスベストは、地中で生成される鉱物であり、その繊維状の形状から「石綿」とも呼ばれています。
非常に軽量で、繊維の直径はわずか0.02μmと極めて細くなっています。このため、アスベストは多くの利点を持っていましたが、長期間にわたって大量に吸引することによって肺がんや中皮種などの深刻な健康問題を引き起こすことが知れ渡りました。
アスベストは、加工や破損によって空気中に飛散し、人が吸い込むことで肺に長期間留まります。アスベストの繊維が肺に蓄積されると、数十年後に病気を引き起こす可能性があり、そのため「サイレントキラー」とも呼ばれます。
アスベスト自体の成分が原因ではなく、その形態が発がん性を持つことが特徴です。アスベストは、その特性により、かつては広く使用されていました。不燃性から耐火建築物や耐火構造物、気密性の高さから断熱材や保温材、軽量性から屋根や天井など、様々な用途に利用されたのです。
また、加工が容易であるため、布状、帯状、糸状などに加工され、塗料やセメントに混ぜて使用されることもありました。その強靭さ、絶縁性、防音性から、建設資材や電気製品、自動車、家庭用品など幅広い分野で重宝されていました。
アスベストは、長所だけを見れば、多機能かつ安価な「夢の材料」として利用されていましたが、その後の健康リスクから使用が禁止されるに至ったのです。
アスベストが使用されている可能性の高い部位
国土交通省の『目で見るアスベスト建材(第2版)』によれば、RC・S造の建物で40部位、戸建て住宅で12部位にアスベスト含有建材が存在する可能性があります。
具体的には、天井用の断熱材や吸音材として使用されたひる石(バーミキュライト)や、アスベスト含有の壁紙、ビニル床タイル(Pタイル)などが挙げられます。これらの建材は、見た目が似ているものの、アスベストが含まれているかどうかは専門の調査が必要です。
天井・壁・床などの隠れた場所に残っていることが多い
アスベストは製品として安定している限り危険性は低いですが、天井や壁、床、配管の保温材などの隠れた場所に残っていることがあります。
特に、見えない場所に使われていることが多く、解体時などに全体調査が必要です。例えば、ビニル床タイルは事務所や病院で多く使用され、配管の保温材は工場や倉庫で利用されてきました。スレート波板も倉庫や工場で見られ、一般住宅でも使用されていたことがあります。
アスベスト含有建材の使用は、上記の通り現在では規制されています。しかし、古い建物では依然としてアスベストが残っている可能性があり、特に解体やリフォーム時に注意が必要です。
すぐに処置が必要なアスベストは少ない
ここまで、アスベストが存在する可能性がある建材について具体的な例を挙げてきました。
しかし、アスベスト含有建材が見つかった場合でも、すぐに慌てる必要はありません。アスベストが含まれる建材は、その構造上アスベストの繊維が固められており、通常の状態では非常に安定しています。アスベストの発がん性はその成分自体ではなく、繊維が非常に細かい形状によるものです。
そのため、製品として封じ込められている限りは直接的な危険性は少ないと言えます。しかし、アスベストが含まれる建材が不用意に傷つけられたり壊されたりするとアスベストの繊維が舞い上がり、空気中に浮遊することで危険が生じる可能性があります。
このため、アスベストが疑われる場合はまずは専門の調査を行い、確実な状態を把握することが重要です。発見された場合でも、すぐに処置を行う必要はなく、改装や解体が必要なタイミングまでそのままにしておいても一般的には問題ありません。
ただし、解体や改装時にはアスベスト処理に関する法規があり、報告や適切な処分が義務付けられています。特に2006年以前に建設された物件ではアスベスト含有建材が使用されている可能性があるため、調査を行うことをお勧めします。ただし、2006年以降でも違法に使用されたケースがあるため、慎重な調査が必要です。
まとめ
アスベストはその優れた耐火性や気密性から、かつて「夢の材料」として広く使用されていました。しかし、アスベストの健康リスクが明らかになり、現在では使用が禁止されています。それでも古い建物にはアスベストが残っている可能性があり、特に天井、壁、床、配管の保温材などの隠れた部分で見つかることが多いです。具体的には、ビニル床タイルやスレート波板、アスベスト含有の壁紙などが考えられます。アスベストが含まれている建材は通常安定しており、すぐに処置が必要なわけではありませんが、解体やリフォーム時には専門的な調査と処理が必要です。特に2006年以前に建設された物件では、アスベストの使用が多かったため、念入りな調査が推奨されます。