アスベスト除去工事は環境や健康に関わる重要な作業なため、作業の前に届出が必要となります。これは、周囲の安全を確保するための重要な措置であり、法的義務でもあります。では、アスベスト除去工事にはどのような届出が必要なのでしょうか?今回は届出の種類や期間などについて詳しく解説します。
アスベスト除去工事の前に調査が必要?
アスベスト除去工事をおこなう前に、アスベストの事前調査が必要かどうかについて疑問をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。
解体工事や改修工事(リフォームやリノベーション)において、アスベストの有無を確認するための事前調査が法律で義務付けられていますが、その必要性や方法について説明します。
事前調査の必要性
アスベスト除去工事の前に事前調査が必要かどうかですが、答えは必要です。
アスベスト除去工事は、アスベストを含む建築物等を解体、改造、補修する特定粉じん排出等作業に該当します。アスベスト除去工事をおこなう際は、アスベストが大気中に飛散し、周囲の人々の健康に影響を及ぼす可能性があるため、飛散防止対策が必要です。
そのため、法律で建材にアスベストが含まれているかどうかを確認し、含まれている場合は除去計画を立てることが義務付けられています。工事の規模に関わらず、すべての工事でこの事前調査が必要とされています。
事前調査をおこなう際には、有資格者による調査・分析が義務化されており、資格を持つ専門家がおこなうことが求められます。アスベストを含む建材の見分け方や、含有レベルに応じた取り扱い方法についても正確に把握する必要があります。
事前調査が不要なことがある
アスベスト除去工事を安全かつ適切な工事をおこなうためには、事前の準備と対策が欠かせません。
工事の規模に関わらず、事前調査は基本的には必ずおこなうことが法律で義務付けられており、その重要性を理解したうえで専門家による正確な調査をおこなうことが不可欠です。ただし、例外としてアスベストの事前調査が不要な場合もあります。
例外が認められているのは、アスベスト事前調査自体が不要なケース、もうひとつは書面調査以降のアスベスト事前調査が不要なケースの大きく分けて2つです。
アスベスト除去工事には各種届出が必要
アスベスト(石綿)を含有する建材の除去は、公共の安全と環境保護の観点から厳格な手続きが求められます。
とくに、アスベストの含有レベルによって異なる届出が必要となります。ここでは、アスベスト除去工事に必要な各種届出について詳しく解説します。
含有レベルについて
届出を提出する前に、アスベストの含有レベルを確認しましょう。
アスベストの含有レベルとは、その建材が破砕や切断された際にアスベストが飛散する可能性を示します。レベル1の建材はアスベスト含有吹付け材であり、もっとも飛散しやすく危険度が高いとされます。
一方、レベル3の建材は石綿が建材に練り込まれ、固定されているため、比較的飛散しにくいとされています。
含有レベル別に届出の内容が異なる
アスベストの含有レベルに応じて、異なる届出が必要となります。
まず、レベル1の場合は、特定粉じん排出等作業実施届出書を環境省に提出する必要があります。これは、大気汚染防止法に基づく届出です。また、建設工事計画届を厚生労働省に提出しなければなりません。これは、労働安全衛生法に基づく届出です。
次に、レベル2の場合も同様に、特定粉じん排出等作業実施届出書を環境省に提出し、建設工事計画届を厚生労働省に提出する必要があります。ただし、建設業や土石採取業においては、追加で建築物解体等作業届も提出しなければなりません。
この届出は、石綿障害予防規則に基づいています。最後に、レベル3の場合は、特定の届出を行う必要はありません。これにより、含有レベルに応じて適切な対策が講じられるようになっています。また、法改正により届出要件が変更されることもあるため、最新の情報を確認することが重要です。
さらに、アスベスト除去工事には上記の届出だけではなく、工事規模や状況によっては関連する別の届出も必要となります。たとえば、一定規模以上の解体工事をおこなう場合は、事前調査結果報告書の提出が義務付けられています。
各届出の届出期間や報告様式について
建築物や工事におけるアスベスト(石綿)の取り扱いは、法的規制や安全対策が欠かせません。
ここでは、おもな届出とその詳細、報告様式について解説します。
おもな届出書の種類
特定粉じん排出等作業実施届出書は、石綿含有材料を解体する作業前に提出する必要があります。
これには解体や補修といった作業が含まれ、提出先は地方自治体です。提出期限はアスベスト除去工事開始の14日前までと定められています。建設工事計画届は、労働安全衛生法の改正によりレベル2建材にも義務付けられました。
この届出は、建設業や土石採取業に限られ、提出期限は同様に工事開始の14日前です。提出先は労働基準監督署です。建築物解体等作業届出書は、建設業や土石採取業以外の場合に必要です。提出期限は工事開始前であり、提出先は労働基準監督署となります。
その他の届出について
特定建設資材を使用した工事においては、アスベストの有無にかかわらず、一定規模以上の工事では届出が必要です。
これは、解体工事や新築・増築工事、修繕・模様替え工事、および建築物以外の工作物の工事に適用されます。提出期限は工事開始の7日前で、提出先は地方自治体です。
さらに、アスベスト事前調査結果報告書は、一定規模以上の工事において必要です。これは、解体工事や改修工事、特定の工作物の解体や改修、および一定トン数以上の船舶の解体や改修に適用されます。提出期限は工事開始前で、提出先は石綿事前調査結果報告システムです。
最後に、地方自治体によっては、独自の条例に基づく届出が必要な場合があります。たとえば、東京都では石綿飛散防止方法等計画届出書が必要です。提出期限は工事開始の14日前で、提出先は地方自治体です。
まとめ
安全に工事を進めるため、アスベスト除去工事においては、事前の届出が法的義務とされています。この手続きは、周囲の安全を確保し、環境や健康へのリスクを最小限に抑えるための重要な措置です。おもな届出として、特定粉じん排出等作業実施届出書や建設工事計画届が挙げられます。これらの届出は、工事の性質や規模に応じて提出期限や提出先が異なるので注意しましょう。