
1970年頃、建材などに多く使われていたアスベスト(石綿)は、微細な繊維を吸い込むことで深刻な健康被害を引き起こすことが知られています。とくに肺がんや中皮腫といった命に関わる病気との関連が指摘されており、発症までに数十年かかることも珍しくありません。本記事では、アスベストによる健康被害の具体的な内容を紹介します。
知らぬ間に進行するリスク!アスベスト吸引がもたらす長年後の健康被害
かつて多くの建物や製品に使用されていたアスベストは、吸い込んでもすぐに影響が出るわけではありません。その微細な繊維が体内にとどまり、数十年後に健康被害として現れることがあります。以下では、その特徴やリスクについて解説します。
なぜアスベストは広く使われていたのか
アスベストは、天然にできた鉱物繊維で、熱や摩擦、薬品にも強く、極めて丈夫で劣化しにくいという特性を持っています。そのため、1970年代から90年代にかけては大量に輸入され、ビルの断熱材やスレート材、自動車のブレーキ部品、家庭用の断熱材など、幅広い用途で使用されていたのです。とくに建築資材としての使用が多く、当時の建物の多くに含まれている可能性があります。
こうした背景から、知らず知らずのうちに多くの人がアスベストに接していたのです。
症状が現れるまでに何十年もかかる理由
アスベストの繊維は非常に細かく、人の髪の毛よりもはるかに細いため、気づかないうちに吸い込んでしまうことがあります。吸い込まれた繊維は体内に長期間とどまり、時間をかけてじわじわと影響を及ぼします。
しかし、こうした影響がすぐに症状として現れるわけではなく、実際には数十年という長い潜伏期間を経て、ようやく健康被害として現れることが多いのです。この「時間差」が、問題の深刻さをさらに増しています。
気づかぬうちにばく露していたケースも
アスベストによる健康被害は、必ずしも工場や建築現場などの作業従事者だけに限られません。作業現場で働いていた人の衣服に付着したアスベスト繊維を家庭で洗濯した家族が吸い込んでいたり、工場近くに住んでいた住民が空気中のアスベストを日常的に吸い込んでいたケースもあります。
このように、職業とは無関係な人々も知らぬ間にばく露していた可能性があり、長年経ってから健康被害が現れる例も少なくありません。自分が関係ないと思っている人も、注意が必要です。
アスベストが原因となる主な病気とは
その症状は数十年後に現れることもあり、気づかないうちに進行するケースも少なくありません。ここでは、アスベストが原因とされる代表的な病気を紹介します。
中皮腫
中皮腫は、肺を包む胸膜や、腹部臓器を包む腹膜などにできる悪性腫瘍です。発症には石綿ばく露が深く関わっており、累積ばく露量が多いほどリスクが高くなります。さらに、工場での作業などに限らず、家庭内や近隣環境での低濃度ばく露でも発症することがあります。
肺がん
アスベストによって引き起こされる肺がんのメカニズムはまだ完全には解明されていませんが、肺に取り込まれた石綿繊維の刺激によると考えられています。また、喫煙との相乗効果によって発症率が高まることもわかっています。
石綿肺
アスベストを長期間吸い続けたことによって肺が線維化し、硬くなってしまう病気です。これは「じん肺」の一種で、とくにアスベストが原因となったものを「石綿肺」と呼びます。この病気は、10年以上にわたって職業上アスベスト粉塵にさらされた労働者に多く見られます。
びまん性胸膜肥厚
びまん性胸膜肥厚は、アスベストによる胸膜炎の後に発症することがあります。胸膜が厚く硬くなることで肺のふくらみが妨げられ、呼吸がしづらくなる病気です。比較的高濃度の石綿を、長期間吸い込んだことによって引き起こされると考えられています。
アスベストを安全に除去するために!信頼できる専門業者に依頼しよう
自宅やオフィスに古い建材が使われている場合、目に見えないアスベストが残っている可能性があります。そのため、信頼できる専門業者に依頼して、適切な方法で除去することが大切です。以下では、業者選びのポイントを紹介します。
資格と許可の確認
アスベストの除去作業は、法律で厳しく規制されており、作業を行うには特定の資格や許可が必要です。たとえば「石綿作業主任者」などの資格や、都道府県の許可を取得しているかを必ず確認しましょう。
無資格の業者に依頼してしまうと、健康被害のリスクや法的トラブルに発展する可能性もあるため注意が必要です。
経験と実績をチェックする
アスベスト除去は専門性の高い作業です。豊富な経験と実績を持つ業者であれば、多様な現場に対応してきたノウハウを持っており、安心して作業を任せられます。過去にどのような現場で作業を行ってきたのか、施工例や対応件数などをホームページや相談時に確認することで、信頼性を判断できます。
安全対策がしっかりしているかを確認
アスベスト除去には高い安全意識が求められます。作業者が適切な防護服を着用しているか、作業エリアがしっかりと封鎖されているかなど、安全対策の有無を確認しましょう。飛散防止のための養生、廃棄物の適切な処理方法、周囲への影響を最小限にする管理体制が整っている業者を選ぶことが重要です。
まとめ
アスベストは、目に見えない繊維が長年にわたり体に影響を与え、重篤な健康被害を引き起こすことがあります。しかもその影響は、数十年後に突然現れるため、気づかないうちにリスクを抱えているケースも少なくありません。もし自宅や職場にアスベストの疑いがある場合は早めに調査を行い、信頼できる専門業者に除去を依頼することが大切です。将来の健康を守るために、今できる対策を講じましょう。