
アスベスト処分は飛散性や使用状況で、レベル1〜3に分類され、処理方法や安全対策の違いで数万円〜数百万円と大きく変わります。本記事ではレベル別の相場と内訳、節約ポイント、工事前のチェック項目をわかりやすく解説します。まずは費用の目安を確認し、適切な業者選びの参考にしてください。
アスベスト処分費用はレベルによって大きく異なる
アスベストは、飛散性や含有状況によってレベル1・レベル2・レベル3の3段階に分類されます。この区分は、作業の危険性や必要な安全対策を示しており、処分費用にも直結します。
たとえば、飛散性の高いレベル1は、作業員への健康リスクがもっとも高く、厳格な養生や専用装備が求められるため、費用も高額になります。一方、レベル3は固形の状態で使用されているため飛散リスクが低く、比較的安価に処分できます。
そのため、建物の解体や改修にともないアスベスト除去を行う際には、まず事前調査でレベルを特定し、それに応じた予算計画を立てることが重要です。
アスベスト処分費用の相場
アスベスト処分費用の相場は、レベルや施工面積、現場条件によって大きく変動します。レベルごとの相場を紹介します。
レベル1
レベル1のアスベスト処分費用の相場は、1平米あたり55,000円~85,000円です。レベル1は、吹付アスベストや保温材など、飛散性が非常に高い状態で使用されているケースです。
この場合、作業員は全面保護服や粉じんマスクを装着し、負圧除じん装置を稼働させながら慎重に除去します。作業空間全体を気密化する必要があり、事前の養生や封じ込め作業に多くの時間と資材を要するため、費用も高くなりがちです。
施工面積が広いと、総額は数百万円単位に膨らむことも少なくありません。また、同じレベル1の除去でも、都市部と地方では人件費や廃棄物運搬費が異なるため、費用に差が出やすい点も覚えておきましょう。
レベル2
レベル2のアスベスト処分費用の相場は、1平米あたり10,000円~60,000円です。レベル2は、アスベストが入の成型版や断熱材など、レベル1ほど飛散しやすくないものの、切断や破砕の際に粉じんが発生するおそれがあるケースです。
施工時には、養生や集じん機を使用する必要がありますが、レベル1ほど厳格な気密化は求められません。ただし、現場条件や使用部位によっては、費用がかさむこともあります。たとえば、外壁材や屋根材の場合には、外部足場や高所作業費が発生するケースもあります。
レベル3
レベル3のアスベスト処分費用の相場は、1平米あたり3,000円ほどです。レベル3は、アスベストが固形で緊密に固定されている非飛散性の材料です。たとえば、スレート屋根材やフロアタイルなどが該当します。
作業時の飛散リスクは低く、比較的安全に撤去できることから、費用は安価です。ただし、最終的には産業廃棄物として適正に処分しなければならないため、廃棄物運搬費や処理費が別途発生します。
アスベスト処分費用の内訳
アスベストの処分費用は、単に撤去作業代だけでなく、周辺環境の安全確保や後処理にかかるさまざまな費用が含まれています。解体工事にかかる費用の内訳を紹介します。
仮設工事費用
仮設工事は、建物解体の事前準備として行われる工事です。安全確保や作業環境整備を目的としており、工事終了後には撤去されることを前提としています。
主に、足場組みや養生シート・防音シートの設置、敷鉄板の設置、仮設トイレの設置などが含まれます。見積書では、これらの費用を仮設工事費用として計上します。
建物解体費用
建物を解体するために必要な費用のことです。内部・外部解体作業費、基礎の撤去作業費などが含まれます。鉄筋・鉄骨コンクリート造など、壊しにくい建物であるほど、解体作業費は高くなります。
付帯工事費用
付帯工事費用とは、工事対象となる建物本体以外の部分における撤去・除去・運搬作業の費用です。具体的には、残留物撤去、庭石・樹木撤去・処分、土間撤去・処分などが付帯工事となります。
建物本体の解体費用と同じくらいの費用がかかると見ておきましょう。ただし、工事の規模や条件によっては、費用が加算されるので注意が必要です。
残置物撤去費用
建物内に家具などが残されている場合、廃材として処分しなければなりません。その際、解体で出た廃棄物とは別で処分する必要があるため、費用が加算されます。
埋設物撤去費用
地中に埋まっている廃棄物などを撤去する費用のことです。まれにアスベストが埋設されていることがあり、規模が大きい撤去作業だと数十万円単位の撤去費用が発生するケースもあります。
埋設物は解体工事中に明らかになることがほとんどなので、追加費用として計上されます。
アスベスト事前調査費用
解体工事の前には必ずアスベストの事前調査が求められます。調査方法は2種類あり、書面調査の場合は2~3万円、現地調査の場合は2~6万円ほどかかります。ただし、調査費用は、建物の規模によって変動します。
また、事前調査を経て、アスベスト分析に出す場合には3~6万円ほど費用が発生します。なお、分析方法には定性分析と定量分析の2種類があり、両方実施する場合には4~10万円ほど必要です。
安全対策費用
安全対策費用とは、アスベスト除去作業者や周辺環境のアスベスト飛散リスクを最小限に抑えるための措置にかかる費用のことです。作業者が着用する防じんマスク・使い捨て防護服・手袋などの防護具や空気中のアスベスト濃度を計測・監視するエアモニタリングの設置費用などが含まれます。
アスベスト処分費用を安く抑えるためのポイント
アスベストの処分には専門的な技術や安全対策が必要となるため、費用が高額になりやすい傾向にあります。ただし、工夫次第ではある程度コストを抑えられます。処分費用を安く抑えるためのポイントを3つ紹介します。
補助金・助成金制度を活用する
自治体によっては、アスベスト除去工事や調査費用に対して補助金を支給する制度があります。これらを活用することで、費用負担を軽減できます。
アスベストに関する補助金は、主にアスベスト分析調査費用の補助金とアスベスト除去作業の補助金の2種類があります。いずれも自治体ごとに条件や申請手続きが異なるため、申請期限や必要書類をチェックし、なるべく早めに準備を進めましょう。申請期限が短い場合もあるため、早めの情報収集が欠かせません。
アスベスト除去実績が豊富な業者を選ぶ
適正価格で安全にアスベスト処分を行うには、実績が豊富な専門業者に依頼するのが有効です。経験の少ない業者だと、作業効率の低下や粉じん対策の不備によって、追加費用が発生するおそれがあります。
その点、経験豊富な業者であれば、事前調査や養生、陰圧管理など、無駄なく施工できるため、結果的に費用を抑えられる場合があります。また、法令遵守や安全対策が確実なため、トラブル防止にもつながります。
なかには、国や自治体の補助金申請のサポートをしてくれる業者もあるため、書類作成や手続きの負担を軽減できます。業者選びの際には、石綿作業主任者などの資格保有者が在籍している、これまでの事例を公開しているかどうかを確認し、信頼できる業者を見極めましょう。さらに、丁寧な現地調査や適切な見積もりかどうかも重要なポイントです。
複数の業者から相見積もりを取る
同じレベルのアスベストでも、処分費用は業者によって大きく異なります。処分費用を少しでも抑えたいのであれば、複数社から相見積もりを取ることが大切です。少なくとも2~3社から見積もりを取り、内訳を比較するとよいでしょう。
内訳を比較することで、過剰な費用や不要な項目を削減できます。ただし、極端に安い見積もりを提示する業者には注意が必要です。不法投棄や適切な安全対策がなされていないなどのリスクがあります。
見積書を受け取ったら、養生費や廃棄物処分費などの必須項目が記載されているかどうか確認し、気になることがあれば直接問い合わせてみましょう。複数社の見積もりを比較することで、相場を把握でき、安全かつリーズナブルにアスベスト処分を行ってくれる業者が見つかりやすくなります。
まとめ
アスベスト処分の費用は、レベルや現場条件によって大きく異なり、数千円から数百万円にまで幅があります。処分費用には撤去作業だけでなく、調査費用や安全対策費用など多くの項目が含まれるため、見積もり内容を丁寧に確認することが重要です。また、補助金の活用や実績豊富な業者の選定、相見積もりの取得によって、費用を適正に抑えつつ安全に処分することができます。建物解体や改修を検討している方は、まずは事前調査を行い、自身のケースに合った費用感を把握することから始めましょう。