アスベストは、健康被害によって使用が禁止されるまで建材として使われていました。一般的には、建物の外壁や断熱材などに含まれているイメージが強いですが、実は工場の煙突にも使われており、今もアスベストを使用した煙突が残っているといわれています。そこで今回は、煙突に塗布されたアスベスト「カポスタック」について解説しましょう。
カポスタックの特性
カポスタックとは、1964年から1977年に日本アスベスト株式会社(現在のニチアス株式会社)で製造された煙突用の石綿断熱材です。断熱材にアスベストを混ぜて圧縮し、筒状に成形製造したもので、煙突の内側に使われています。
カポスタックには、発がん性が強い茶石綿(アモサイト)が最大80%含有しており、経年劣化によってアスベストが飛散してしまうため大変危険なものです。
煙突用のアスベスト断熱材の種類
カポスタックのほかにも、煙突用のアスベスト断熱材にはさまざまな種類があります。ニューカポスタックは、ライナー層と断熱層の2層構造になっており、ハイスタックはケイ酸カルシウム板を丸型に成形しているなど、それぞれ特徴に違いがあるのです。
カポスタックが使われている煙突は今もある
カポスタックが使われている煙突は今も5万本程度あるのではないかと推測されています。アスベストの除去を行うか、煙突を塞ぐなどの対応をしなければアスベストを飛散させてしまうため、煙突の構造などに詳しい業者に対応を依頼しましょう。
カポスタックが使用されていた理由
なぜ煙突にアスベスト断熱材「カポスタック」が使われていたかというと、カポスタックを使用することで煙突の耐久性を高められたからです。煙突の内部は、高温の排ガスがとおっています。
とくに工場の煙突は、燃料によって最大約600度になることもあり、排ガスに化学成分などが含まれているため煙突の消耗が激しいものでした。アスベストは、熱に強く薬品への耐久性も高かったため、煙突の消耗や劣化を防ぎ、耐久性を高めるために使用されていたのです。
カポスタックが使用された場所
アスベスト断熱材を使用した煙突は、工場だけではなく、教育施設や病院、公民館など、さまざまな建物で設置され、今でもアスベストの除去がされていないものが多数あるとみられています。
1970年代から1990年代に施工された煙突は、カポスタックを含むアスベスト断熱材が使用されている可能性が高く、カポスタックを使用した煙突を解体する場合、アスベストを飛散させることがないよう充分に対策をしてアスベストを除去する必要があるのです。
また、劣化した煙突を使用するだけでアスベストを飛散させる可能性が高いため、アスベストの除去をしなければ甚大な健康被害を引き起こすおそれがあります。
カポスタック取り扱い時の安全対策
アスベストは、非常に細かい繊維状の物質であるため、空気中に飛散しやすく、吸い込むと肺がんなどの病気を引き起こす原因となります。過去には、アスベストによる健康被害で死亡例も多数報告されており、現在ではアスベストの製造や使用が禁止されているのです。
そのため、新たにカポスタックなどのアスベスト断熱材を使用した煙突が設置されることはありませんが、古い煙突を使用したり解体・改修工事をする場合には、アスベスト調査をし、アスベストの除去工事を行う必要があります。
アスベスト調査は義務付けられている
そもそも、建築物を解体・改修工事する場合、事前にアスベスト調査をし、アスベストの除去をすることが法律によって義務付けられています。煙突は排気を目的に設置されているため、アスベストを飛散させやすいので、大気汚染や健康被害を防ぐためにも信頼できる業者にアスベスト除去を依頼することが大切です。
煙突に使用されたアスベストの除去方法
煙突に使用されたアスベストを除去する工法にはさまざまな種類があり、業者によって対応できる工法が異なります。なかでも代表的なのは「ウォータージェット工法」で、高圧洗浄機からの高圧水でアスベストを除去する工法です。
作業員が入れない煙突でも施工可能で、粉塵の飛散を抑えられる安全な工法であるため、多数の業者が採用しています。ウォータージェット工法のほかに、業者独自の工法も多数あります。
煙突のアスベスト除去にかかる費用
どの工法でも、調査を行ったうえで、足場を組み養生を準備して作業を行うため、1日で作業が終わるものではありません。日数や高額な費用がかかるので複数の業者に問い合わせをし、見積もりをとることがおすすめです。
まとめ
古い煙突は、耐熱性や耐久性を高めるためにカポスタックなどのアスベスト断熱材を使用している可能性が高く、経年劣化によりアスベストを空気中に飛散させている可能性があります。アスベストは大気を汚染するだけでなく人体に有害なため、一度アスベスト調査を行い、カポスタックなどの使用が判明した場合は速やかにアスベストの除去を依頼しましょう。アスベストの除去作業はとても危険なため費用も高額です。業者によって採用している工法も異なるため、複数社に問い合わせや見積もり依頼をし、業者選びのポイントとして比較するとよいでしょう。