古い建物のリフォームや解体を考えたとき、気をつけたいのがクロスに含まれるアスベストです。見た目では判断しにくく、知らないまま作業を進めると健康への影響が出るおそれがあります。とくに2006年以前に建てられた建物では注意が必要です。ここでは、クロスとアスベストの関係、リスク、正しい対応について紹介します。
古い建物のクロスで注意したいアスベストの話
古い建物のクロスには、アスベストが使われている可能性があります。見た目ではわかりにくいため、リフォームや張り替えの前に知っておきたいポイントを見ていきましょう。
クロスにアスベストが使われていた背景
アスベストは、とても細い繊維状の鉱物で、熱に強く燃えにくい特徴があります。この性質から、以前は多くの建築資材に使われてきました。日本では1970年代から1990年代前半にかけて、住宅やビルのさまざまな場所で使用されています。
クロスの場合、不燃性能が求められる場所に使われるケースが多く、安全性を高める目的で選ばれていました。当時は健康への影響が十分に知られておらず、一般的な素材として扱われていた点も特徴です。
不燃クロスや関連素材との関係
アスベストが使われているクロスは、不燃クロスや無機質壁紙などと呼ばれることがあります。避難階段や通路、エレベーターホールの壁や天井、住宅では台所など、火を使用する場所で多く使われてきました。
また、注意したいのはクロス本体だけではありません。貼り付けに使われた接着剤や下地を整えるためのパテ、さらに壁の下地材に含まれている場合もあります。そのため、表面の壁紙だけを見て判断するのは難しいとされています。
築年数から考える注意点
日本では2006年9月の法改正により、アスベストの使用は全面的に禁止されました。そのため、それ以降に建てられた建物ではリスクは低いと考えられます。
一方で、2006年8月以前に着工された建物では、規模に関わらずアスベストを含むクロスが使われている可能性があります。戸建て住宅であっても例外ではないため、古い建物のクロスを扱う際は、安易に剥がしたり加工したりしないことが大切です。
アスベストを含む壁紙がもたらす健康への影響
古い建物の壁紙には、アスベストが含まれている可能性があります。見えないからこそ気づきにくく、知らずに触れることで健康に影響を与えるおそれがあります。ここでは、壁紙に含まれるアスベストの危険性について見ていきましょう。
空気中に広がりやすいアスベストの特徴
アスベストは非常に細かい繊維状の鉱物です。壁紙や建材の表面が劣化したり、壊れたりすると、目に見えないほど小さな繊維が空気中に広がりやすくなります。
この状態になると、日常の呼吸で体内に入りやすくなります。特別な作業をしていなくても、室内に漂った繊維を吸い込んでしまう可能性がある点が大きな特徴です。
体内に残り続けることで起こる健康リスク
アスベストの繊維は、一度体のなかに入ると自然に外へ出にくい性質があります。長い年月をかけて体内にとどまり続けることで、健康への影響が現れる場合があるのです。
代表的なものとして、中皮腫や肺がん、アスベスト肺などが知られています。これらの病気は、吸い込んですぐに症状が出るわけではなく、10年から40年ほど経ってから発症するケースも少なくありません。
壁紙の扱い方で高まるリスク
壁紙は、古くなるほど傷みやすくなり、アスベストが飛び散るリスクが高まります。とくにリフォームや修繕で壁紙を剥がす作業を行う際は注意が必要です。
壁紙だけではなく、接着剤や下地材が傷つくことで、繊維が一気に空気中へ舞い上がるおそれがあります。見た目だけで安全かどうかの判断はできないため、不安がある場合は無理に作業を進めず、専門の調査を受けることが大切です。
アスベストを含む壁紙を安全に処分するためには
壁紙にアスベストが含まれていると判明した場合は、自己判断で処分してはいけません。ここでは、安全に処分するために知っておきたい流れを整理します。
作業前に整えておく体制と準備
アスベストを含む壁紙を処分する際は、現場に決められた知識をもつ責任者を配置し、作業に関わる人全員が注意点を理解したうえで進めます。正しい知識がないまま作業を行うと、知らないうちにアスベストを吸い込んでしまうおそれがあります。そのため、事前の説明や確認を行い、安全を最優先にした準備が欠かせません。
飛び散らせないための対策と除去作業
処分作業でとくに大切なのが、アスベストを周囲に飛び散らせないことです。作業する場所はしっかりと養生し、関係のない人が近づかないようにします。
また、作業する人は専用のマスクなどを着用し、体を守りながら進めます。壁紙を剥がす際には、水分を含ませて舞い上がりを防ぎ、壁紙や下地を傷つけないよう慎重に取り外していく、という流れです。
処分後に必要な運搬と記録の管理
取り外した壁紙や下地材は、専用の袋に入れてしっかり密閉します。これにより、運ぶ途中で繊維が漏れるのを防ぎます。その後、決められた処分場へ運び、正しい方法で処理する、という流れです。
作業が終わったあとも、記録の作成や報告書の保管が必要です。こうした対応をきちんと行わないと、建物の所有者や関係者が指導や罰則の対象になる可能性があるため、最後まで丁寧な対応が求められます。
まとめ
古い建物のクロスには、見た目ではわからない形でアスベストが含まれている場合があります。劣化や工事をきっかけに繊維が空気中に広がると、長い時間をかけて健康に影響をおよぼすおそれがあります。とくに壁紙の張り替えやリフォームの際に自己判断で作業を進めるのは危険です。安全を守るためには、事前の調査と正しい手順が欠かせません。アスベストの疑いがある場合は、無理に触らず、アスベスト除去を専門に行う業者に依頼することが大切です。
