古い建物では、壁材や天井材などにアスベストが使用されているものがあります。「住んでいて大丈夫?」と不安に思う人も多いでしょう。実際にアスベストは、吸い込むことで健康被害をもたらす可能性がありますが、状態によっては危険性が低い場合もあります。ここでは、アスベストが含まれる建物に住む際の安全性と注意点について解説します。
知っておきたいアスベストの正体と健康への影響
アスベストはかつて「奇跡の鉱物」と呼ばれ、住宅や工場など幅広く使われてきました。しかし、便利な一方で人体に深刻な悪影響を及ぼすことが明らかになり、現在は使用が禁止されています。ここではアスベストの特徴と危険性について解説します。
アスベストとはどんなもの?
アスベストは、天然にできる繊維状の鉱物です。熱に強く、丈夫で加工しやすいうえに価格も安かったため、1950〜1970年代にかけて建物の建材や断熱材として多く利用されてきました。
とくに住宅や学校、ビルの天井材や壁材などに広く取り入れられていた歴史があります。しかし後に、吸い込むと人体に悪影響を及ぼすことが分かりました。そのため日本では2006年9月以降に建設された建物には、アスベストの使用が全面的に禁止されています。
アスベストがもたらす健康へのリスク
アスベストが危険とされる理由は、繊維が非常に細かく空気中に舞いやすいことにあります。吸い込むと肺にたまりやすく、体内で分解されにくいため長期間残り、組織を傷つけてしまうのです。
その結果、肺がんや中皮腫など命に関わる病気の原因となることが確認されています。こうしたリスクを受け、国でも厳しい規制が進められ、解体工事や処理方法に細かいルールが定められています。安全のためには、専門業者による点検や対応が欠かせません。
アスベストがある家に住んでも大丈夫?安全性と注意点
アスベストが使われた建物に住んでいて「大丈夫なのかな」と不安に思う人もいるのではないでしょうか。実は、アスベストがそのままの状態であれば必ずしも危険ではありません。ただし、劣化や破損で繊維が空気中に飛ぶと健康に大きな影響を与えるため、正しい知識と対策が必要です。
普段の生活でのリスクは低い
アスベストを含む建材は、固められた状態であれば繊維が外に出にくく、日常生活の中で危険となることは少ないとされています。厚生労働省も「アスベストは繊維が空気中に浮遊したときに危険」と説明しており、天井や壁の中に封じ込められているものは通常の生活で問題になることはあまりありません。
そのため、住んでいるだけで直ちに健康被害を受ける可能性は低いといえるでしょう。ただ、祖父母の家や昔ながらの民家などに住んでいる方の中には「大丈夫なのだろうか」と不安を抱えているケースも少なくありません。家族が暮らす住まいだからこそ、正しい知識を持って安心して生活することが大切です。
古い建物では劣化に注意が必要
ただし、築年数が経過した住宅では、壁や天井の建材が劣化し、繊維が空気中に飛ぶ可能性があります。アスベストが飛散すると、吸い込んで肺にたまりやすく、深刻な健康被害につながる恐れがあります。
普段の暮らしでとくに問題がなくても、古い建物に住んでいる場合は「劣化の有無」に目を向けることが大切です。不安がある場合は、建物の状態を確認しながら安心して暮らせるよう心がけましょう。
アスベスト住宅をリフォームするときに知っておきたいこと
アスベストを含む住宅は、普段の生活で大きな危険があるわけではありません。しかし、リフォームや改修を行うときには注意が必要です。建材を壊したり削ったりすると繊維が飛び散る可能性があるため、正しい知識と専門的な対応が欠かせません。
リフォーム前に必ず調査を行う
リフォームを計画する場合は、まずアスベストの有無を調べる調査が欠かせません。これは法律でも義務づけられており、工事を行う業者も必ず事前に確認をします。もしアスベストが含まれていた場合、専門業者による適切な対策が必要です。
たとえば、建材を壊さずに内部に繊維を封じ込める「封じ込め」や、壁材などを安全に覆う「囲い込み工法」などがあります。こうした方法を用いれば、繊維が空気中に飛散するリスクを減らすことができます。施主側も「調査を依頼して確認すること」が重要であり、安心して工事を進めるための大切な準備となります。
DIYは避けて専門業者に任せる
アスベストが使われた建材は、見た目だけでは分からないことも多いため、DIYでの改修は大変危険です。壁や天井に穴を開けたり、ボードを切断・研磨したりすると、繊維が舞い上がり吸い込むリスクが一気に高まります。
そのため、安易に自分で作業を行うのは避けるべきです。専門業者であれば、防護具や養生シートを使って周囲に飛び散らないよう徹底した対策を取ることができます。
また、工事中は作業員だけでなく近隣住民にも影響が及ぶ可能性があるため、適切な工法と管理が欠かせません。家族や地域の安全を守るためにも、必ず専門業者に任せてリフォームを進めることが大切です。
まとめ
アスベストはかつて広く使われてきた建材ですが、吸い込むと深刻な健康被害をもたらす危険性があることが分かっています。ただし、封じ込められた状態であれば普段の生活で大きなリスクは少なく、すぐに不安になる必要はありません。しかし、築年数の古い住宅では劣化による繊維の飛散に注意が必要です。また、リフォームや改修を行う際には必ず事前の調査を行い、専門業者に依頼することが重要です。正しい知識を持って対応することで、家族や周囲の人々の安全を守りながら安心して暮らすことができます。
