アスベストの事前調査や除去工事を依頼する際、アスベストは人体に有害であるため、特に除去工事では危険度が高く、費用が高額になります。少しでも費用負担を減らすために活用したいのが、自治体の補助制度です。そこで今回は、アスベスト調査や除去に関する補助金について詳しく解説します。
アスベスト対策のための補助金制度とは
アスベストは、1955年以降から1975年に法規制されるまで、多くの建築物に建材として使用されていました。しかし、アスベストによる健康被害や死亡例が多数報告され、現在では製造や使用が禁止されています。
また、建築物を解体・改修(リフォーム)する場合、アスベストによる大気汚染や健康被害を防ぐため、事前にアスベスト調査をおこないアスベストを除去することが法律で義務付けられています。
このようなアスベスト対策のために、国は補助制度を設け、地方自治体を窓口にして対応しています。民間建築物でアスベスト調査や除去工事をおこなう場合、補助金を受け取れる可能性があります。
アスベストの事前調査は、建物の規模は関係なく、基本的にすべての建物が対象になります。解体・改修費用とは別に、アスベスト調査やアスベスト除去の費用が必要になるので、施主としては少しでも費用を抑えたいところです。
自治体によって、補助制度の有無や補助金の金額、申請方法などが異なるため、近隣の自治体で確認が必要です。
アスベスト調査の補助金事例
ここでは、アスベスト調査の補助金事例を紹介します。
千代田区のアスベスト調査補助金事例
千代田区のアスベスト調査に関する事例をご紹介します。アスベスト調査のための補助金申請には必要書類もあるため、事前に用意をしておくと申請までスムーズです。
調査と除去工事で申請に必要な書類として、近隣見取り図や登記事項要約書が必要です。そのほか、建築情報に関する写真や検査事業者2社以上の見積もりが求められます。除去工事完了後に5年以上、継続して使う建物しか補助金対象として認められません。
補助要件は3つです。住宅の駐車場と倉庫、マンションの共有部分、機械式立体駐車場が当てはまります。補助額は除去工事費用の3分の2です。
住宅の駐車場と倉庫やマンションの共有部分に対する補助金の上限額は、100万円/1棟に設定されています。機械式立体駐車場の上限額は1,400万円/1基です。
そのほか、集合住宅の場合なら理事会や役員会の議事録を用意しましょう。提出書類に含まれているため、事前に準備しておくとスムーズに進みます。
一般的な申込期間は毎年12月の初旬頃の予定です。ただし、申込みの際には事前相談をしなければなりません。予定数に達するとしめきられる場合があるため、早めの申請が必要です。詳細の確認は千代田区役所環境まちづくり課で電話でも受け付けています。
また、同じ東京都でも区が違う、さらにほかの県だと内容が異なる場合もあります。下記は港区や大阪市の事例です。
港区と大阪市のアスベスト調査補助金事例
アスベスト含有の吹付け材などを使用しているか、使用した疑いのある建築物が補助要件に当てはまります。補助額は除去工事費用の2分の1相当額です。補助額の上限は戸建住宅の場合だと50万円で共同住宅や事業所などは200万円に設定されています。
申請には建てられた当時の図面や建築確認済証のほか、登記簿の写しなど、書類が複数必要です。検査や除去工事の着手前と年度1月7日までに書類の提出が求められます。予算状況で早めにしめきることもあるため、早めに書類や申請用意をしたほうがいいでしょう。
大阪市の民間建築物吹付けアスベスト除去補助制度もご紹介します。補助要件は吹付け材などが露出し、今後も継続使用する予定の民間建築物です。
補助額は上限25万円以内でかかった費用全額に設定されています。また、分析調査は1試料、上限10万円です。
除去は工事費用3分の1以内、上限額は戸建住宅20万円で、戸建て以外は100万円に設定されています。
また、担当部署も市や区ごとに異なるため注意が必要です。たとえば、千代田区は環境まちづくり部・建築指導課・構造審査係または安全対策担当ですが、港区は環境リサイクル支援部・環境 課環境指導アセスメント係が担当しています。大阪市は計画調整局・建築指導部・監察課です。
補助金申請の条件と手続き
アスベストの事前調査に対しての補助金は、吹付けアスベストなどが建材として使用されているおそれのある住宅や建築物が対象となります。補助金の限度額は、1棟25万円です。
また、アスベストの除去工事に対する補助金の対象は、アスベストの事前調査の結果、吹付けアスベストなどが使用されていることがわかった住宅や建築物です。
対象となる建物のアスベストの除去や封じ込め、または囲い込みの作業をおこなう費用が補助され、補助率は自治体の補助額の2分の1以内になります。補助金の申請手続きについては、必ず自治体によって定められた申請方法や流れを確認してから進めましょう。
基本的には、はじめに、自治体に相談の申し込みをします。アスベスト調査や除去工事を業者と契約した後だと、補助金の申し込みができない場合があるので、注意が必要です。事前協議(相談)の際は、自治体に指定された書類を準備しなければなりません。
基本的には、図面や写真、建物登記簿謄本、アスベストの調査結果の報告書などが必要になります。自治体との事前協議の結果、補助金の申請が可能であれば、業者に見積もりを依頼し、業者が決まったら補助金交付の申請書を自治体に提出しましょう。
審査を通過した場合は、補助金交付決定通知が届きます。そしてアスベストの事前調査をおこなった結果、建物にアスベストの含有が判明した場合は、除去工事をおこなう前に「建築物解体等作業届」などの必要書類を提出し、除去工事を実施します。
工事後の完了検査を終えると補助金の確定通知が届くので、請求書を自治体に提出すると補助金が受け取れます。以上が基本的な手続きの流れになりますが、自治体によって補助金の有無や、条件や金額、申請方法や流れについて異なるため、必ず管轄の自治体に問い合わせをするなどして確認してみましょう。
補助金活用のポイント
少しでも費用負担を減らすため補助金を活用したいところですが、注意しなければならないポイントがあります。まず、自治体の補助金には予算があるため、申し込みを受け付ける期間が決まっていたり、補助する件数が決まっていたりする場合があるので確認してみましょう。
受付期間内でも、予算の上限に達した場合は、申請を締め切っている可能性もあります。管轄の自治体のホームページをこまめにチェックし、申し込み期間を逃さないように気をつけましょう。
また、自治体との事前相談より前に業者と契約をしている場合、補助金の申請ができない自治体もあります。建物を解体・改修する場合、解体業社やアスベストの調査会社の選定ばかりに時間を割いてしまわず、各自治体のホームページをチェックし、補助金の申請の流れや条件についても必ず確認しておきましょう。
順序を誤ってしまうと補助金が受け取れないので注意が必要です。アスベストの調査や除去を依頼する業者についても、管轄の自治体の地域の業者でないと補助金の対象にならない可能性もあるので、自治体に確認したほうがよいでしょう。
また、自治体によってはアスベストの補助金を設けていない場合もありますが、ほかの補助金が受け取れる可能性もあります。諦めずに、なにか活用できる補助制度がないか問い合わせてみるとよいでしょう。
まとめ
住宅など建物を解体・改修する場合、アスベストの調査や除去が必要なため、費用がかさんでしまうでしょう。費用負担を減らすためには、自治体の補助制度を活用することがおすすめです。各自治体によって、手続きの流れや条件、金額などが異なるため、抜かりなく情報を集めることが大切です。申請の手順などに誤りがあり、せっかく受け取れるはずだった補助金が受け取れなくなってしまわないように、管轄の自治体のホームページをしっかり確認し、疑問点については必ず確認するようにしましょう。