
アスベストは健康への影響が大きいため、専門的な知識と資格を持つ人しか除去作業を行うことができません。建物の解体や改修でアスベストが見つかった場合、安全に処理するためには法令で定められた資格が必要です。本記事では、アスベスト除去に関わる代表的な資格を一覧で紹介し、それぞれの役割や取得のポイントを解説していきます。
アスベストってなに?健康への影響と基本
アスベストとは、天然にできる鉱物が細い繊維状に変化したものを指します。見た目はとても細かく軽いため、空気中に舞いやすく、知らないうちに吸い込んでしまうことがあります。昔は建物の断熱材や防音材など、便利な素材として広く使われていました。
しかし、アスベストを吸い込むと肺にたまりやすく、長い年月をかけて病気を引き起こすことがわかっています。そのため、現在では使用が禁止され、取り扱うときには厳しいルールと専門的な知識が必要とされています。
アスベストを含む建物で作業するなら資格が必須!その理由とは
アスベストは人体に大きな影響を与えるため、作業には必ず資格が必要です。ここでは、資格がなぜ必要とされているのかについて紹介します。
なぜ資格が必要なのか
かつて多くの建物にアスベストが使われていたため、解体工事などで粉じんが飛び散り、大気汚染の原因となることが問題視されてきました。
そのため2021年以降、法律が順次改正され、下請け業者を含めすべての事業者が対象となりました。人体に害を及ぼす恐れがあるため、資格を持つ人による適切な対応が欠かせないのです。
現在のルールと資格の役割
現在では、建物の改修や解体工事を行う際、事前にアスベスト使用の有無を調査し、電子システムを通じて報告することが義務化されています。この調査は資格を持つ専門家が行う必要があり、正しい知識と手順で安全を守る仕組みになっています。資格があるからこそ、安心して作業が進められるのです。
アスベスト除去に欠かせない資格とは
アスベストを扱う作業には、健康被害を防ぐために資格が必要です。ここでは、代表的な資格を一覧で紹介し、その内容を解説します。
現場をまとめる「石綿作業主任者」
石綿作業主任者は、アスベスト除去の現場を監督する国家資格です。2006年に導入され、事業者は最低1人を選任しなければなりません。資格取得には、10時間程度の技能講習を受講し試験に合格する必要があります。
受験資格に実務経験は不要ですが、18歳以上であることが条件です。講習は2日間で行われ、試験は各科目40%以上かつ合計60%以上で合格となります。合格率は9割以上と高く、講習内容をしっかり理解していれば取得は難しくありません。
作業従事に必須の「石綿取扱作業従事者」
石綿取扱作業従事者は、アスベストを含む建材を運ぶなど、実際に現場作業を行う人に必須の資格です。違反すると事業者が罰則を受けるため、取得が義務づけられています。18歳以上なら誰でも受講でき、特別教育は4.5時間と短く、1日で修了できます。
学科のみで実技や試験はなく、オンライン受講も可能です。また、石綿作業主任者資格を取得すれば、この資格も同時に認められるため、現場作業から将来的な監督まで視野に入れるなら主任者資格の取得を目指すとよいでしょう。
調査に必要な「石綿含有建材調査者」
石綿含有建材調査者は、2023年10月から義務化された資格です。建物の改修や解体工事を行う際には、事前にアスベストが含まれているかを調査する必要があり、その調査は資格を持つ人だけが行えます。
以前は資格がなくても調査できる場合がありましたが、現在は厳格化されています。取得条件は他の資格と比べて複雑な部分もあるため、興味のある方は制度の詳細を調べたうえで準備することが大切です。
調査の専門資格「アスベスト診断士」
アスベスト診断士は、日本アスベスト調査診断協会に登録することで事前調査が可能になる資格でした。2023年9月までは登録だけで調査ができましたが、同年10月以降は厚生労働省が定める要件を満たさなければなりません。
講座は「基礎編」「調査・診断編」「石綿処理編」の3日間で行われ、終了後の試験で各講座60%以上、全体で70%以上の得点が必要です。専門性の高い資格であり、今後も厳格な基準のもと活用されます。
測定のプロ「作業環境測定士」
作業環境測定士は国家資格で、一種と二種があります。二種ではアスベストの粉じんが発生する現場の環境測定が可能で、一種になると特定化学物質に関する分析まで対応できます。
合格率は一種で約6割、二種で約4割と、やや難易度は高めです。その分専門性が評価される資格であり、安全な作業環境を保つために重要な役割を担っています。
まとめ
アスベストは長く建材として利用されましたが、吸い込むと肺にたまり健康被害をもたらす危険性があるため、現在では法律により厳しく規制されています。建物の解体や改修でアスベストを扱う場合、無資格の作業は認められておらず、石綿作業主任者や石綿取扱作業従事者、石綿含有建材調査者など、複数の資格を持つ専門家が関わることが必要です。資格を取得することで、安全に作業を進めるための知識や正しい手順を理解でき、作業者本人だけでなく周囲の人々を守ることにつながります。アスベスト作業における資格は、安全と信頼を確保するための欠かせない要素といえるでしょう。