
かつては建材として当たり前に使われていたアスベストは、現在では健康被害のリスクから使用が禁止されました。しかし、過去に建てられた建物の中には、現在もアスベストが残っている可能性が否定できません。そこで本記事では、アスベストが使われていた時期や対象となる建物の特徴について解説します。
2006年9月以降着工の建物はアスベストが使われていない!
2006年9月の法改正により、アスベスト(石綿)を含む製品の製造・輸入・譲渡・提供・使用は全面的に禁止されました。このため、2006年9月以降に着工した建物にはアスベストが一切含まれていません。法改正後の建材は厳格な規制と検査を経て流通しており、住宅やオフィス、商業施設など用途を問わず安心して利用できます。
新築やリノベーションを検討する際には、着工日が2006年9月以降であるかを確認することが、健康リスクを避ける上での重要な基準です。万一不明な場合は、建築確認申請書や建築業者の履歴をチェックし、第三者機関による証明書の有無を確かめると安心です。
アスベストの不安を抱えずに快適な住環境を手に入れるためにも「着工日」を手がかりに、アスベストフリーの年代を見極めましょう。また、中古物件を選ぶ際には築年数だけでなく、着工日を示す書類を必ず確認しましょう。そして、工事履歴を保管することで将来的な売却時にもスムーズな取引が可能になります。
アスベストが使われていたのはいつまで?使用が制限・禁止された年代
日本では、アスベストの危険性が徐々に知られるようになり、1970年代から段階的に規制が進められてきました。使用が始まったのは、1950年代とされています。健康被害が徐々に明らかになる中で、法改正によって徐々に使用が制限され、最終的には全面禁止に至りました。
ここでは、年代ごとの規制内容をわかりやすく紹介します。
「1975年」一部のアスベスト使用が初めて制限される
1975年、日本で初めてアスベストの使用に対して規制が導入されました。アスベスト(石綿)を吹き付ける作業に対し、健康への悪影響が懸念されたため、作業の制限が始まったのです。これはアスベスト問題に対する最初の一歩であり、とくに高濃度で飛散しやすい吹き付け材に注目が集まりました。
しかし、建材や断熱材としては引き続き使用されていたため、この段階では1975年以降も多くの建物にアスベストが使われ続けます。
「1995年」使用制限の対象が大幅に拡大
1995年には、アスベストに関する規制が大きく進展しました。これまでは一部の用途に限られていた規制が、吹き付け材以外の建材や工業製品にも広がり、使用制限の対象が大幅に増加したのです。断熱材など、建設や製造の現場で一般的に使用されていた製品が規制対象に追加されました。
アスベストの健康リスクがより明確になるにつれ、国も対策を強化していったのです。
「2006年」アスベストが全面的に禁止される
2006年には、アスベストの使用に関する最終的な大きな転機が訪れます。この年の9月から、アスベストを含む製品の製造・輸入・譲渡・提供・使用が全面的に禁止されました。
これにより、建材を含むすべての分野でアスベストの使用が認められなくなり、日本におけるアスベストの歴史は実質的に終焉を迎えたのです。
アスベストは今も残っている?その理由と現状とは
アスベストは2006年に全面禁止となったものの、現在でも一部の建物には残っているケースがあります。法規制が段階的に進められてきたため、禁止以前に建てられた建物では、まだアスベストが使われたままの場所も少なくありません。
なぜ現在もアスベストが残されたままなのか、その背景と理由を見ていきましょう。
段階的な法規制の影響で今も残る建物がある
アスベストの有害性が知られるようになったのは、主に海外の研究からでした。そのため、日本では規制が段階的に進められることとなり、完全に使用が禁止されたのは2006年になってからです。
そのため、2006年より以前に建てられている建物には、アスベストが含まれている可能性を否定できません。
飛散しなければリスクは低いとされている
アスベストは空気中に飛散し、それを吸い込むことで健康被害を引き起こします。逆に言えば、建材に封じ込められていて飛散していない状態であれば、すぐに危険というわけではありません。
そのため、多くの古い建物ではアスベストがそのまま使用されており、現時点では除去されずに維持されているケースもあります。
アスベスト製品は耐用年数が長い
アスベストは耐火性・断熱性・耐久性に優れており、当時は理想的な建材とされていました。そのため、アスベストを使用した製品や建材は長期使用を前提に作られており、取り換えられることなく数十年にわたって使われているケースが多く見られます。この耐久性の高さが、今もアスベストが残る一因となっています。
除去や改修にかかる高額な費用が障壁に
アスベストの除去や処理には、高度な専門技術と厳しい法的手続きが必要となるため、費用が非常に高額になります。そのため、建物の所有者や管理者の中には、コスト面の問題から解体や改修を先送りしているケースも少なくありません。こうした背景もあり、今なおアスベストを含む建物が各地に残されているのです。
まとめ
アスベストは2006年9月以降に着工された建物には使用されていないため、それ以降の建物であれば基本的に安心できます。しかし、それ以前に建てられた建物にはアスベストが残っている可能性があり、規制の経緯や残存の理由を正しく理解しておくことが大切です。もし対象となる建物に住んでいたり所有していたりする場合は、専門家に相談して、必要に応じた点検や対策を検討しましょう。