アスベストのみなし判定とは、建物や施設におけるアスベストの有無を推定する手法です。視覚的な検査や建設年月日、建材の種類などの要因を考慮し、アスベストのリスクを予測します。本記事では、アスベストの危険性やみなし判定とアスベスト含有の産業廃棄物を安価にするためのポイントについても解説します。
アスベストはなぜ危険?
アスベスト(石綿)は、その優れた性質から建材や工業製品に幅広く利用されてきました。
しかし、その便利さとは裏腹に、健康への深刻な危険を孕んでいます。建築現場や解体作業、船舶のメンテナンスなどでアスベストが使用されていた場合、その取り扱いや処理には特別な注意が必要です。まず、アスベストの危険性は、その微細な繊維にあります。
アスベストの繊維は人の髪の毛よりもはるかに細く、空気中に飛散すると容易に吸引され、肺胞に沈着します。これらの繊維は肉眼では見えないほど微細であり、その性質ゆえに体内に取り込まれやすく、長期間にわたって滞留する傾向があります。
さらに、アスベスト繊維が体内に取り込まれると、肺の組織内に留まり続けます。一部は体外に排出されますが、その多くは丈夫で変化しにくい性質をもっています。そのため、肺内に留まった繊維は炎症を引き起こし、肺組織が傷つけられ、線維化が生じます。
さらに、アスベストに含まれる活性酸素がDNAを損傷し、細胞ががん化する可能性もあります。アスベストにはさまざまな種類がありますが、とくにクロシドライトやアモサイトといった角閃石族のものは、発がん性が高いとされています。
これらの種類のアスベストを吸入した場合、中皮腫や肺がんといった深刻な疾患を引き起こす可能性が高まります。さらに、アスベストによる健康被害は潜伏期間が非常に長いことでも知られています。
症状が現れるまでには数十年に及ぶ期間がかかるため、被害が明らかになるのが遅れ、治療が難しくなる場合があります。このように、アスベストは静かな時限爆弾とも呼ばれることがあります。
アスベストの除去にはレベルがある
アスベストは、その微細な繊維が空気中に放散されると、深刻な健康リスクを引き起こすことが知られています。
そのため、アスベストを含む建材の取り扱いには、厳格な安全対策が必要です。アスベスト除去作業には、発じん性のレベルに応じた具体的な対策が求められます。
アスベストの除去作業レベル
アスベストの除去作業には、レベル1からレベル3までの区分があります。
レベル1は、最も高い発じん性をもつ建材に対する作業を指し、石綿含有吹き付け材などが該当します。アスベストの除去作業では、作業場所の隔離や作業者の防護具の着用が必須です。
次に、レベル2は、発じん性が高い建材に対する除去作業を示します。石綿含有保温剤や防火材などがこれに該当し、レベル1と同様の厳重な対策が求められます。
そして、レベル3は、比較的発じん性が低い建材に対する作業を指します。これには、レベル1やレベル2に該当しないそのほかの石綿含有建材が含まれます。これらの作業では、湿式作業が原則とされています。
これは、作業中に発じんを最小限に抑えるため、水を使用して湿潤に保つことを指します。また、作業者は必要に応じて適切な防護具を着用する必要があります。
アスベストのみなし判定とは
工場や住宅の建て替えなどで発生する廃棄物の中には、アスベストが含まれている可能性がある建材があります。
このような場合、アスベストの有無を確認するためには分析が必要ですが、近年では分析費用や処理費用の増加にともない、アスベストの有無を確認せずに処分するみなし判定という手法が注目されています。
トータル費用の考え方
一般的に、アスベストの含有が疑われる建材に対しては、採取・分析費用が処分費用を上回ることが多いため、分析を行うという選択肢はコストが高くつく場合があります。
ただし、アスベスト含有の確率が非常に高い場合は、分析結果に基づいて追加の処分対策が必要となり、トータル費用は高額になりがちです。そのため、アスベスト含有の確率に応じて、みなし判定を活用して費用を削減できる場合があります。
最終手段としてのアスベスト含有分析
環境省のマニュアルでは、アスベストの有無を判定する際、年代やメーカーなどからの絞り込み方法でも判断できない場合にのみ、分析を行うことが示されています。
つまり、アスベストが含有されている可能性が高いと判断される場合は、分析を行わずにアスベスト含有物として処理することが許容されています。ただし、アスベストが含有されていない可能性が高い場合は、分析によって処理方法が変わる可能性があります。
そのため、アスベストの有無や含有量を考慮して、分析の必要性をケースバイケースで判断することが重要です。
まとめ
アスベストはその優れた性質とは裏腹に、深刻な健康被害を引き起こす危険な物質でもあります。そのため、アスベストの取り扱いや処理には常に十分な注意が必要です。アスベストのみなし判定は、アスベスト含有物の処理において、分析費用や処理費用の削減を目指すために存在します。アスベストの含有確率や建材の特性に応じて、適切な判断を行うことが重要であり、環境省のマニュアルなどを参考にしながら、安全かつ効率的な処理方法を検討する必要があります。