アスベストによる大気汚染や健康被害を防ぐために、建築物などを解体・改修するときは、事前にアスベストの調査をし、結果を報告することが義務付けられています。しかし、専門性が高く、調査方法や相場などを詳しく知らない人も多いのではないでしょうか。そこで今回は、アスベスト調査にかかる費用や調査内容について解説していきます。
目次
アスベスト調査の必要性と対象のパターン
アスベストとは、耐熱性や耐摩擦性に優れた鉱物繊維で、以前は建材として使われていましたが、繊維が非常に細かいため、空気中に飛散しやすく、吸い込んでしまうと肺に入り込み、肺がんや悪性中皮腫などの重篤な病気を引き起こすおそれがあることがわかっています。
現在では、アスベストを含有する建材の製造や使用は禁止されていますが、古い建築物は特にアスベストの建材が使用されている可能性もあるため、工事することによってアスベストの飛散を防止するために、事前に調査をする必要があります。
そのため、2022年に大気汚染防止法が改正され、建築物などを解体・改修する場合は、すべての工事において、事前にアスベストの調査することが義務付けられています。
また、対象となる建築物の場合は、アスベストの事前調査の結果を、労働基準監督署および都道府県に報告することが義務付けられています。報告の義務があるのは、解体部分の床面積の合計が80㎡以上の場合と、請負金額が100万円以上(税込)の場合で、個人の自宅のリフォームや解体も含まれています。
また、報告の義務がなくても、工事発注者に対して書面で調査結果を掲示しなければなりません。事前調査や報告を怠ったり、虚偽の報告をしたりした場合は、罰則が科せられます。
報告対象となる工事
アスベストの調査や工事では労働基準監督署や都道府県への報告が義務付けられています。空気中に浮遊するアスベストの繊維を吸い込み、肺がんや悪性中皮腫などの健康被害が社会問題化した経緯もあるからです。
アスベストを含む建材や製造は禁止されていますが、過去に建てた建物に使用されているものがあります。また、2022年に大気汚染防止法の改正もあり、建築物の解体や改修では全工事で事前のアスベスト調査が義務付けられました。報告義務は法人所有だけではなく、個人宅のリフォームや解体も含まれているため注意が必要です。
報告義務の対象になるのは「解体部分の床面積の合計が80㎡以上の場合と、請負金額が100万円以上(税込)」の場合が当てはまります。報告義務対象に当てはまらなくても、工事発注者には書面での調査結果の掲示が必要です。また、事前調査や報告を実施しない、虚偽報告をした場合は罰則もあります。
アスベスト調査の流れと方法
アスベスト調査の流れとしては、まず調査を依頼することから始まりますが、2023年10月から、事前調査は有資格者がおこなうことが必須となっているので、有資格者が在籍する調査会社に調査を依頼しましょう。
次に、第一次スクリーニングとして、書面・図面調査が必要です。工事をする建築物がどの時期に建てられたかによって、アスベストを含有している可能性が高いかどうかがわかるので、設計図だけでなく登記簿謄本などさまざまな書類を確認し、調査していきます。
続いて、第二次スクリーニングとして、現地調査をおこないます。書面だけではアスベストの有無が判断できない場合もあるため、現地で建材や外壁、下地などを目視で確認します。次に、現地調査でも判断が難しい場合は、サンプルを採取し分析する流れになります。
そして、すべての調査を終えたら報告書を作成し、依頼者へ掲示します。このとき、対象となる建築物の場合は、労働基準監督署および都道府県(地方自治体)にも報告が必要です。分析方法は、アスベストの含有の有無を確認する「定性分析」や、アスベストの含有率を検査する「定量分析」があります。
まずは定性分析をおこない、アスベストが含まれていた場合に定量分析をおこないます。定量分析は、X線を使用したり、建材からサンプルを採取したりして分析をおこないます。
アスベスト調査の費用相場と抑制方法
アスベスト調査にかかる費用相場は、書面調査で約2〜3万円。現場調査で約2〜5万円となっています。また、定性分析と定量分析は、それぞれ3~6万円程度でしょう。
ほかにも、アスベスト粉じん濃度測定費用の相場は、敷地内環境の測定で約5,000円、室内環境の測定で約5,000円、アスベスト除去工事現場で約5,000円といわれています。
会社によっては、報告書作成のために別途費用がかかる場合もあるので確認が必要です。これらの費用は、工事する建築物の規模や状況などにより変動することがあります。
アスベストの分類によっても調査費用が異なるので、各社に見積もりをとって比較することが大切です。また、アスベスト調査やアスベストの除去に対して、地方公共団体からの補助金を受け取れる可能性があります。
自治体によって、補助金の有無や、支給対象、支給額が異なるため、近隣の自治体に確認してみましょう。少しでも、解体工事・改修工事の費用を抑えるためには、アスベスト調査にかかる費用も抑える必要があります。
複数社に見積もりをとり調査費用の安い会社へ依頼したり、補助金を申請したりするなどして費用を抑えましょう。
その他調査が必要な場合
アスベストが使用された建物の解体は、通常の解体と比べて費用がかなり高くなる可能性があります。そのため、補助金を活用し解体や除去がおすすめです。ただし、補助金の内容は自治体によって異なるため、詳細は各自治体の公式ホームページで確認してください。
補助金には「アスベスト調査」と「アスベスト除去」の2種類があります。調査では、アスベストの有無を調査するための費用に対して支給されます。一棟あたりの上限金額は、通常25万円です。除去は、アスベストの除去や解体時の費用に対して支給されます。
補助金の申請をするには、どちらも事前相談が必要です。また、必ず業者と契約を結ぶ前に申請を行い、交付決定通知を受け取らなければいけません。補助金の利用を検討している方は、早めに相談や申請をしましょう。
アスベスト分析方法
分析方法には主に2つの方法があります。「定性分析」と「定量分析」です。定性分析は目視調査と呼ばれ、いわゆる現場調査のことをいいます。
簡単にいうと、アスベストが含まれているかどうかを調べる作業のことです。設計工事に着手した日や、使用された建築材料を確認し、石綿含有建材データベースなどの情報をもとに調査します。
その際、設計図書に記載していない建築物はないかの確認も重要です。複数の顕微鏡で観察し、繊維のありなしを確認します。
繊維があれば、形態や鉱物の特性などを把握し、繊維の種類を見分けます。また、外壁は複層なってできているため、層ごとに分析するのも重要です。
定量分析は、アスベストがどのくらい含まれているのか、量や割合など、含有量を調査する方法です。主にX線回折分析法を使用して測定していきます。X線を照射し、反射したデータを詳しく調査することで、アスベストの含有率を計算するのです。
アスベストの事前調査は有資格者のいる専門機関へ
アスベストは人体に悪影響を及ぼし、多くの国や地域では、調査や吹き付けが法律で規制されています。日本でも、遅れて取り締まりが開始され、徐々に規制されるようになりました。アスベストは長年の潜伏期間を経て、人体に害が加わり健康を害します。
そのため、アスベストの取り扱い時には、適切な方法と注意が必要です。ひとりで解決しようとせずに、石綿含有建材調査者などの有資格者、経験豊富な専門家によって調査や分析を依頼しましょう。
もし安易に素人が対処しようとした場合、隣接する建材を損傷させたり、飛散リスクを高めたりする可能性があります。調査が必要と思われる場合は、専門機関のプロフェッショナルに依頼してください。
また、処理方法などが国の法律で定められており、作業内容には多くの注意点があるため、かなり専門的な技術が必要です。業者によっては事前相談が可能です。アスベストの有無や状態が少しでも気になる方は、調査の前に一度お問い合わせください。
まとめ
アスベストは、空気中に飛散しやすいため、建築物を解体・改修する際は、事前調査をし、アスベストの飛散を防止しなくてはなりません。過去には、アスベストによる健康被害により死亡した事例もあることから、重篤な病気を引き起こす原因となるアスベストの事前調査は法律によって義務付けられています。どのような建物を調査するかによって、費用や調査方法などが異なるため、複数社に見積もりをとってみましょう。また、会社によって調査や分析にかかる日数に差があるため、確認が必要です。大気汚染や人への健康被害を防ぐためにも、信頼できる会社に調査を依頼することで、安心して工事を進められるでしょう。